CASE STUDIES

ケース・スタディ

フィールドは違っても、やっていることは一つ。
チームの世界線が変わる瞬間を、共に設計する。

Case 01

「その問題、最初から存在しない」

― あるSaaSスタートアップの組織変革 ―

組織開発 / ホラクラシー

チームには課題が山積していた。

意思決定が遅い。誰かが承認するまで、誰も動かない。責任の所在が曖昧で、気づけば「それは私の仕事ではない」という空気が漂っている。ミーティングは増えるが、何も決まらない。

優秀な人材が揃っているのに、なぜ動かないのか。

問題を潰しても、問題は消えなかった

最初、チームは一つひとつの課題に向き合おうとしていた。意思決定が遅いなら、決裁フローを整理しよう。責任が曖昧なら、役割を明確にしよう。ミーティングが機能しないなら、アジェンダを決めよう。

でも、一つ潰すと、また別の問題が生まれた。いたちごっこだった。なぜか。構造そのものが、問題を生み出していたからだ。

ピラミッド型組織は「誰の下にいるか」で動く。上位者が機能しなければ、チーム全体が止まる。判断は上に集約され、現場は「待つ」ことを学習する。これは誰かの能力の問題ではない。構造が必然的に生み出す状態だ。

「その構造が、最初からなかったとしたら?」

チームは戸惑った。「上司がいない組織って、どういうこと?」「誰が決めるの?」

しかし、対話を重ねるうちに、あることが起き始めた。一人が言った。「待って。意思決定が遅いって問題、上司がいなければそもそも発生しないよね?」別の一人が続いた。「責任の所在が曖昧って問題も、機能担当者が自分で決めるなら、最初からないじゃん。」

「この問題、構造上、存在しないじゃん。」

その瞬間、部屋の空気が変わった。パラダイムが、内側から溶けていった。

チームが、自分たちの組織を設計した

Harmonixは、ホラクラシー型組織の「正解」を持ち込まなかった。代わりに、チームが自分たちの組織を設計するプロセスを設計した。問いを立て、対話し、試し、また問い直す。その繰り返しの中で、チームは少しずつ、自分たちの組織の形を見つけていった。

外から与えられたフレームではなく、自分たちが作ったもの。だから、誰もが当事者だった。

3ヶ月後、承認を求めるための会議が消えた。「それは私の仕事ではない」という言葉が消えた。そして、新しい問題が生まれたとき、チームは自分たちで解き始めた。

それが、私たちのゴールだ。

Case 02

「治療ではなく、旅だ」

― あるAIプロダクトのコンセプト設計 ―

プロダクト開発 / コンセプト設計

チームには技術があった。AIがあった。心理学の知見もあった。でも、プロダクトが見えなかった。

「何をつくるのか」は決まっていた。AIを使ったメンタルヘルスのサービス。しかし、問いを立てるたびに、霧の中に迷い込んだ。カウンセリングアプリなのか。自己啓発ツールなのか。瞑想アプリなのか。競合を並べるほど、自分たちが何者なのかが見えなくなった。

「これは、何のためにあるのか」

Harmonixが最初に立てた問いは、機能でも市場でもなかった。「このプロダクトは、人の何を変えようとしているのか。」

対話を重ねる中で、一つの言葉が浮かび上がってきた。

「治療ではなく、旅だ。」

これは医療的な介入ではない。症状を取り除くのではない。人が自分の内側を探索し、世界の見え方が変わっていく——その旅をガイドするプロダクトだ。その瞬間、霧が晴れた。

コンセプトが、戦略を規定した

「意識の変容支援」というコンセプトが決まると、全てが連動して見えてきた。ターゲットが見えた。競合との差別化が見えた。UXの世界観が見えた。コンセプトの一言が、プロダクトの全体を規定した。

このプロジェクトでHarmonixが担ったのは、心理学的な知見と事業戦略の両方を同じ言語で扱うことだった。心理変容のプロトコルが、プロダクトのコアロジックになった。同時に、それはマーケットセグメントの根拠になり、収益モデルの設計につながった。

心理学が戦略を動かした。戦略が心理学を実装した。

3ヶ月後、チームは言った。「最初、何をつくるのかわからなかった。今は、なぜつくるのかが、はっきり見えている。」

コンセプトとは、答えではない。全ての問いに、方向を与える羅針盤だ。

Case 03

「工場に、粘菌を見た」

― ある食品メーカーの生産設計プロジェクト ―

新規事業 / 組織設計

依頼はシンプルだった。「製造ラインを、もっと効率化したい。」

中規模の食品メーカー。多品種少量生産へのシフトが進む中、既存の生産管理システムが追いつかなくなっていた。イレギュラーが起きるたびに、工場長やミドルマネジメントが呼ばれた。彼らが判断し、指示を出し、現場が動く。それが、この工場の「正しいやり方」だった。

「効率化」という問いを、疑った

Harmonixが最初にしたのは、依頼を一度保留することだった。対話を重ねた。すると、本当の問いが浮かんできた。「なぜ、現場は自分で判断できないのか。」

問題が起きるたびに、工場長たちが解決してきた。それ自体は正しかった。しかし、その積み重ねが、ある状態を生み出していた。現場は、判断することを手放していた。そして工場長たちは、あらゆる問題の集積地になっていた。

全てをミドルマネジメントに集中させる構造そのものが、会社全体をスタックさせていた。

「その構造がなかったら?」

ここでHarmonixは、全く別の宇宙をチームに見せた。粘菌——単細胞生物でありながら、脳も中枢もなく、迷路の最短経路を見つけ、東京の鉄道網に近いネットワークを自律的に形成する生物。中央指令はない。それぞれが環境に反応しながら、全体として最適解を見つけていく。

チームは最初、戸惑った。「工場の話をしているんですよね?」しかし、対話が進むにつれて、何かが変わり始めた。

「工場長がいなくても、現場が自分で最適解を見つけられるってこと?」

人を含めた、自律分散の設計

Harmonixが提案したのは、完全な自動化ではなかった。人を含めた、自律分散システム。現場のオペレーターが、自分の判断で動ける範囲を設計する。工場長やミドルマネジメントは「制御」するのではなく、「環境を整える」役割に変わる。ボトムアップで、現場が生産を動かす。

それは、工場の設計を変えることではなかった。工場の中にいる人間の役割と、判断の在り処を変えることだった。

設計の方向性をプレゼンした日、チームのリーダーが言った。「こんな提案、今まで見たことがない。ワクワクする。」そして、気づきが生まれた。「ミドルマネジメントを強化しても、また次の問題が来る。構造を変えなければ、何も変わらない。」

問いが変わると、答えが変わる。答えが変わると、設計が変わる。設計が変わると、現場が変わる。